【自在創研】フードビジネス×財務ブログ

法人成りでも創業融資は使える?制度のポイントと注意点

法人成りでも創業融資は使える?制度のポイントと注意点

2026年06月04日 07:29

事業が軌道に乗ってくると、税理士さんから「そろそろ法人化(法人成り)しましょうか」と提案されることがあります。そこで多くの経営者がふと思い立つのが、これです。「会社を作ったら『新設法人』になるんだから、また『創業融資』でお金を借りられるんじゃないか?」

創業融資は、実績がなくても借りやすく、金利や無担保・無保証などの条件が優遇されている「ボーナスタイム」のような制度です。もし法人成りして再度これが使えるなら、資金調達のチャンスですよね。しかし、結論から言うと、多くの場合、法人成りで創業融資は使えません。今回は、意外と誤解されている「法人成りと創業融資」のルールと、そこから見えてくる「銀行が本当重視しているポイント」について解説します。 

▼そもそも「創業融資」とは?なぜ人気なのか?

本題に入る前に、「創業融資」のメリットを整理しておきましょう。創業融資(主に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」など)は、まさに創業時だけに用意されたボーナスステージのような制度です。
通常、銀行融資は「過去の決算書(実績)」を見て審査します。しかし、創業融資には以下の特権があります。実績ゼロでも借りられる 過去の実績がないため、「事業計画書(これからの見込み)」を重視して審査してくれます。無担保・無保証で借りられる 原則として担保が不要で、代表者の連帯保証も不要(経営者保証なし)で借りられる枠があります。金利や返済期間が優遇されている。つまり、まだ何者でもない状態でも、リスクを抑えて資金調達できる最強の制度なのです。もし法人成りして再度これが使えるなら、資金調達のチャンスですよね。

▼事業の中身が同じなら創業とは見なされない

法人成りといっても、多くの場合は、個人事業主でやっていた事業をそのまま法人に移す形だと思います。

飲食店(個人) → 飲食店(法人)建設業(個人) → 建設業(法人)

このように「事業の実態が同じ(継続している)」場合、銀行や日本政策金融公庫は「創業」とは見なしてくれません。例えば、個人事業で3年実績がある場合、法人を作った日が1日目でも、銀行審査では業歴3年目の企業として扱われます。創業融資の要件(創業して2期以内など)は、個人の期間も含めた通算で見られるため、対象外になってしまうのです。

▼【実例】私が今年1月に法人化したケース

実は、私自身が良い例です。私はコンサルタントとして個人事業主を約8年間営み、今年の1月に法人成り(合同会社化)しました。登記簿上は「設立1年目のピカピカの新設法人」です。では、私が銀行に行って「創業融資を貸してください!」と言ったらどうなるでしょうか?
答えは「NG(対象外)」です。
銀行の担当者はこう判断します。「箱は新しくなりましたが、やっていることは8年前からの続きですよね? ならば、創業(1年目)ではなく、業歴9年目の企業として審査しますね」
創業融資には「創業2期以内」といった要件がありますが、これは「個人の期間も含めた通算」で見られます。私の場合、通算8年を超えているため、創業融資という「初心者向け優遇ゲート」は通れないのです。

▼「創業融資NG」は悪いことではない

「なんだ、借りられないのか」とガッカリする必要はありません。創業融資が使えないということは、裏を返せば「実績のある企業として、通常のプロパー融資や保証協会付き融資の土俵に立てる」ということです。
創業融資は「実績がないから、事業計画書(未来)を見て貸す」という制度です。一方で、法人成り(実績あり)の場合は、「過去(個人時代)の実績(確定申告書)を見て貸す」ことになります。
個人時代にしっかりと黒字の実績があれば、創業融資よりも良い金利・条件で借りられる可能性だって十分にあります。逆に、個人時代が赤字続きだった場合は、看板を法人に架け替えても融資は厳しいでしょう(※結局、見られるのは「実態」なのです)。


▼例外:創業融資が使える「レアケース」

一方で、法人成りでも創業融資が使えるケースが一つだけあります。 それは、全く異なる事業を始める場合です。

デザイナー(個人) → 小売店(法人)

このように、これまでの経験とは全く関係のないビジネスを法人で立ち上げる場合は、実質的にゼロからのスタートとなるため、創業融資の対象として見てもらえます。
ただ、ここには大きな落とし穴があります。 それは、「過去(個人時代)の通帳は絶対に見られる」ということです。「新しいビジネスだから、個人の過去は関係ないだろう」 そう思っていたら大間違いです。

もし個人事業主時代に、
ずっと赤字が続いていた資金繰りがショート寸前だった税金の滞納があった
このような状態だと、「法人で新しいことをやります!」と言っても、銀行は「経営者としての資質(管理能力)」を疑います。看板を掛け替えても、中身(経営者)が同じである以上、個人の信用情報は必ず審査に影響するのです。

▼「看板」よりも「実態」

 今回のテーマから学べる、資金調達の鉄則があります。 それは、銀行は「法人か個人か」という形式よりも、「実態(儲かっているか、返せるか)」を見ているということです。
創業融資が使えないから資金調達できないのではありません。個人時代の実績(決算書)が悪いから調達できないのが真実です。
法人成りを検討する際は、単なる節税メリットだけでなく、「今の個人の決算書で、銀行は評価してくれるか?」「法人化した瞬間に融資を受けられる財務状態か?」という視点を持つことが重要です。

もし今、
「法人成りを機に運転資金を確保したい」
「個人の決算書がちょっと弱いが、どう見せればいいか」
「創業融資がダメならどの融資を狙うべきか」
そう悩んでいるなら、ぜひ一度ご相談ください。

私は店舗資金繰りコンサルタントとして、
銀行が評価する「法人成りのタイミング」
個人から法人へのスムーズな融資引き継ぎ
創業融資以外の調達ルートの選定
を一緒に考え、実行まで伴走します。形だけの法人化で終わらせず、「資金調達力が上がる法人化」を目指しましょう。