
おいしくて売れているサイゼリヤから多くを学ぼう
2026年06月03日 12:52
今回は、これまでこのブログでも複数回登場しています「サイゼリヤ」について取り上げてみます。
まず、私はかなりのサイゼリヤ好きです。サイゼリヤとの出会いは大学生からで、かなり長い付き合いとなりますが、今でも週1回以上店舗利用しています。また、単によく利用する飲食店に留まらず、サイゼリヤという企業が好きです。飲食店経営における標準化・効率化、科学的経営の極みのような企業だと捉えており、フードビジネスに関わる者として尊敬の念さえ抱いています。もちろん、株も保有しています(笑)
サイゼリヤに関する書籍は5冊程度持っており、その中でも、創業者である正垣泰彦さんが書かれた『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理』という書籍がとても好きです。正垣さんの小気味よい論調も痛快な感じで、楽しみながら読める飲食店経営の指南書、且つ金言集といった感じです。何度も読み返して、頭の中に刷り込んでいます。今回は、そんな私が大好きなサイゼリヤについて、経営視点で語ってみたいと思います。
皆さんご存知の通り、サイゼリヤは「ミラノ風ドリア300円」「ハンバーグステーキ400円」「グラスワイン100円」といった格安メニューを提供している、人気のイタリアンファミレスチェーンです。 言わずと知れた「コスト・リーダーシップ戦略」の代表的な企業であり、徹底した低価格路線で成長を遂げてきました。
では、サイゼリヤは圧倒的な安さを実現しつつ、なぜしっかりと儲かっているのでしょうか? その「安くて儲かる秘訣」を3つの視点から解説します。
▼安くて儲かる秘訣①:キッチンの極小化・効率化
サイゼリヤにはかつて全国に小型店舗が数多くありましたが、実はどの店舗も「キッチンの占める面積」が意外と大きかったようです。そこで2015年頃から、サイゼリヤでは「キッチン面積を半分にした店舗」の導入を開始しました。
いわゆるコストゾーン(利益を生まない場所)であるキッチンを半減することで、その分客席を増やして売上を増やす。また、店舗自体を小さくできれば、テナント料や土地購入費、建設費なども低く抑えることができます。そのため、家賃の高い駅前や都心の極小地への出店が可能となりました。
では、なぜキッチンを半分にできたのでしょうか? それは基本的に「店内で調理をしないから」です。
サイゼリヤのキッチンには包丁などの調理器具はなく、ガスレンジ(直火)もありません。 自社工場(セントラルキッチン)でほぼ完璧に仕上げられた料理を、店舗ではベルトコンベア式のオーブン(ジェットオーブン)等で加熱調理するだけ。徹底してオペレーションを簡素化しているため、キッチンを極限まで小さくできるのです。
▼安くて儲かる秘訣②:製造直販(飲食業界のユニクロ)
サイゼリヤが儲かる理由として忘れてならないのが、食材を自社生産していることです。 しかも、ただの自社生産ではなく、栽培・収穫から加工・調理まで一貫して行う「製造直販(SPA)」です。
この「製造直販」というキーワード、前回のブログを読んだ方はピンときたかもしれません。 そう、あの一世を風靡した「東京チカラめし」「金の蔵」の運営会社、SANKOマーケティングフーズも現在、自社で船を持って漁に出るなど、この「製造直販」の漁業版に本気で取り組んでいます。
しかし、前回の記事でも触れた通り、SANKO社が8期連続赤字で苦戦を強いられているのに対し、サイゼリヤはこのモデルで圧倒的な利益を出し続けています。ちなみに、同じ製造直販を目指しながら、なぜこれほどの差が出るのか?
それは、サイゼリヤが何十年もかけて築き上げた「徹底力」と「規模」の違いにあると考えられます。
種の開発から行う:レタスは種(品種)の段階から開発しており、1つの株でより多くの人が食べられる効率のいいレタスを開発。
海外に専用工場:ホワイトソースは、牛乳文化のオーストラリアに専用の工場を建設し、自社製造。
端材」をうまく活用:例えば野菜のミネストローネでは、ブロッコリーの房だけでなく「端材(茎や芯)」も細かく刻んで活用しています。本来捨てる部分を具材にすることで、原価を抑えつつ「かさまし効果」と食感のアクセントを両立させる。この「歩留まり」に対する異常なまでのこだわりが、利益を1円単位で積み上げているのです。
単に自社で作るだけでなく、世界規模で最も効率的な方法をゼロから設計するレベルで取り組んでいるからこそ、他社が真似できない低コストを実現できているのです。
▼安くて儲かる秘訣③:理系思考による「科学的経営」
サイゼリヤの経営陣には、創業者の正垣氏をはじめ理系学部出身者が多いことが特徴です。 入社試験でも論理的思考を問われると言われています。
サイゼリヤでは、調理の作業工程はもちろん、店内の清掃から、野菜がもっと美味しく食べられる保管温度までもがすべて数値化されています。SANKO社の事例と比べても分かるとおり、理想(ロマン)だけでは製造直販は成功しません。サイゼリヤには、それを支える冷静沈着な「科学的経営」があるのです。
▼おいしいから売れるのではない
最後に、サイゼリヤ創業者・正垣泰彦会長の言葉を紹介します。 著書のタイトルにもなっていますが、 「おいしいから売れるのではない。売れているのがおいしい料理だ」 です。
このタイトルの意味合いとしては、「自分の店の料理がおいしいと思ってはいけない。なぜなら、自分の店の料理をうまいと思ってしまったら、『売れないのはお客さんの舌がおかしいからだ』『景気が悪いからだ』と他責にしてしまうから」 という戒めが込められています。
目の前の現実を謙虚に受け入れて、本当にお客様が満足されていることは何かを見極めよう。自分たちが作る料理や加工品が「うまい」と思ってしまったら、もう進歩はありません。 モノに溢れる現代、消費者は特別な理由や魅力がないと商品を手に取ってくれません。
「初めに安売りありきではない」というのもサイゼリヤのポリシーです。 看板メニューのミラノ風ドリアが300円なのは、「あるべき価格」を設定し、それに近づけるために日々改善に取り組んだ結果なのです。
▼まとめ
サイゼリヤは、徹底した効率化とシステム化を図ることで、他社より安いコストを持続的に実現することに成功している企業です。
これは「科学的経営」、つまり経営事象を数値や客観的なデータできちんと捉えて、因果関係を考えPDCAを回し続けた努力の結果です。
「売れているのが美味しい料理」そう捉えれば、サイゼリヤは間違いなく日本でトップクラスに「美味しいお店」と言えます。私たち経営者にとってサイゼリヤはまさに「気付きの宝庫」なのです。